あるアパートの一室では、漫画描きの姉弟が、せっせと天才バカボンを”修正”している。
どんな作品でも完璧に模倣が出来る姉は、弟が探し当てた「不快な絵」を「誰も傷付かない絵」に描き変える遊びに夢中になっているのだ。
同じ頃、近くの小学校では、過激な表現のあるものから子どもたちを守ろうとする動きが高まっており、親たちは手当り次第に過去の出版物を検閲しては本屋や図書館から撤去させていた。
姉弟たちは抗うために、次から次へと過去の名作に手を付け、徹夜を重ねていく。
ある日、下の階で暮らす女が姉弟の部屋の扉を叩いて訴える。
「夫に施した修正を戻して欲しいー」
砂消しゴムで夫の顔を削ると、そこには脚を開こうと鱗を剥がすセイレーンの姿が浮かび上がって来るのだった……